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緑内障について

緑内障とはどのような病気?

緑内障(りょくないしょう)は、何らかの原因で視神経が障害され、 視野(見える範囲)が狭くなる病気で、 眼圧の上昇がその病因の一つと言われています。
これだけの説明ではなかなか理解しづらいと思います。
そこで、緑内障という病気をしっかりと理解するために、1つ1つ理解を深めていきましょう。


眼球内の圧力が高まると、圧力に弱い視神経乳頭に影響が出ます。
そしてどの部分の視神経が圧力を受けたかによって視野が狭くなる部分が異なります。
さらに、そのまま放置すると視野はどんどん狭くなっていきます。

緑内障による視野障害の進行イメージ
目の中心をややはずれたところに暗点(見えない点)ができます。 自分で異常に気づくことはありません。
暗点が拡大し、視野の欠損(見えない範囲)が広がり始めます。 しかし、この段階でも片方の目によって補われるため、異常に気づかないことが多いようです。
視野(見える範囲)はさらに狭くなり視力も悪くなって、日常生活にも支障をきたすようになります。 さらに放置すると失明に至ります。
実際には両目でカバーしたり、目を動かしたりするために気づかない事が多い。

目の構造

まずは目の構造について見ていきましょう。
目の構造といっても、「緑内障」に関係する部分だけ説明致します。下の図「目の断面図」をご覧ください。 みなさんも一度はこういった目の断面図を見た記憶はございませんか?
今回は緑内障に関係する部分だけですので詳しい説明は省きますが、とりあえず各部分の簡単な説明だけご覧ください。
重要なのは、どういった問題がどの部分で発生しているのか、という事です。ですから下記の説明で分からない部分がありましても、難しく考えず「なるほどね」といった程度で軽く見ていただければと思います。
説明の中で分からない部分はその都度、下の図を見ながらご確認してください。

角膜(かくまく)

目の表面にある透明な膜の部分のことです。いわゆる黒目(くろめ)の部分にあたります。 この薄い透明な膜は白目(しろめ)の部分とつながっています。 また表面は涙でおおわれ、目の乾燥と内部への細菌感染を防いでくれます。

虹彩(こうさい)

角膜と水晶体の間にありる薄い膜のことです。虹彩の中央は瞳孔(どうこう)といって、虹彩の働きで目に入る光の調節をしています。カメラでいう絞りのことですね。 この虹彩の色がその人の目の色となります。日本人の場合は茶褐色です。

毛様体(もうようたい)

虹彩にくっついて水晶体水(すいしょうたい)の周りを囲んでいる組織です。 この毛様体から無数の毛様小帯という突起が出て水晶体とつながっています。 水晶体の厚みの調節をしたり、房水(ぼうすい)を作る働きをしています。

シュレム管(しゅれむかん)

虹彩と角膜の間にある隅角(ぐうかく)という部分にある穴のことです。 ここから毛様体(もうようたい)で作られた房水(ぼうすい)が血中に排出されます。 毛様体で作られる房水の量とシュレム管から出ていく房水の量は同じで、これにより眼圧保たれています。

水晶体(すいしょうたい)

虹彩の奥にあり、カメラでいう凸レンズの役割をします。 透明で近くを見るときは厚くなったり、遠くを見るときには薄くなったりします。 この働きにより網膜(もうまく)にピントが合うようになり、 物がハッキリ見えたり、遠くの景色が見えたりします。

硝子体(しょうしたい)

水晶体の奥にあり、網膜までの眼球の内腔を埋めるゼリー状の組織です。 眼球の形状を維持したり、外部からの圧力を吸収して眼球を守っています。 角膜から入る光は硝子体を通り、網膜に届きます。 網膜でしっかりピントが合うように眼球の形状を保つ硝子体の役割は重要です。

網膜(もうまく)

網膜は薄い膜で、硝子体を囲むように配置されています。 ピントの合った光を受け取り、それを電気信号に変えて、脳に送る働きをします。 網膜は再生機能がありませんので、網膜が傷つくと視野が狭くなったり、失明になる可能性があります。

視神経乳頭(ししんけいにゅうとう)

網膜には脳への電気信号を通すための視神経線維が張り巡らされています。 その視神経線維が集まる場所が視神経乳頭です。 眼球の眼圧が高くなると、この部分に圧力がかかり、 視神経が圧力を受けて、視野(見える範囲)が影響を受けます。

線維柱帯(せんいちゅうたい)

シュレム管のちょうど穴の部分にあります。 毛様体(もうようたい)で作られた房水(ぼうすい)がシュレム管から排出されるときに、流れる房水をろ過する働きをします。

房水(ぼうすい)

房水は目の中にある液体で、眼球内を循環しています。毛様体で作られ、眼球内のいろいろな場所へ酸素や栄養を届ける働きをします。そして隅角所にあるシュレム管から血中に排出されます。

房水と眼圧

目の構造をご覧いただけたでしょうか?
なんだかややこしいイメージがあるかもしれませんが、目の構造はカメラとよく似ています。 水晶体がレンズ、網膜はフィルム、虹彩はしぼりの役目を担っています。
この中で重要なのは上の図のピンク色の矢印で書かれた房水の流れです。
房水(ぼうすい)については上記の「房水」の部分をご確認ください。
この房水は毛様体(もうようたい)で作られ、水晶体と虹彩の隙間を通り、前房(ぜんぼう)という場所に入り、 次に隅角をいう場所に入って、線維柱帯(せんいちゅうたい)を通り、シュレム管から排出されます。(目の構造の拡大図を御覧ください)
眼圧(目の中の圧力)は作られる房水の量と排出される房水の量のバランスによって決まります。
つまり、排出される房水の量が少ないと、眼球内に房水が徐々に増えて、眼圧が上がります。

緑内障の種類

では、ここからは緑内障の種類について見ていきましょう。
緑内障といってもいくつか種類があります。
眼圧が高くなる原因によって、
1.原発緑内障(げんぱつりょくないしょう)
2.続発緑内障(ぞくはつりょくないしょう)
3.先天緑内障(せんてんりょくないしょう)

に分けられます。
さらに「原発緑内障」は「開放隅角緑内障」「閉塞緑内障」「正常眼圧緑内障」の3つに分けられます。
右図が大まかに緑内障を分類したものです。
色々と病名が出てきましたが、これについても1つ1つ見ていきましょう。

原発緑内障

この緑内障は“目以外の部分に緑内障となる原因がない”緑内障です。 つまり目に何らかの異常があり、それが緑内障を引き起こしているということです。
右図にもありますように、原発緑内障はさらに「閉塞隅角緑内障」「開放隅角緑内障」があり、「開放隅角緑内障」には「高眼圧緑内障」と「正常眼圧緑内障」に分類できるものがあります。「正常眼圧緑内障」は我が国の緑内障患者の70%を占めています。
欧米よりも日本人に多いようで、わが国の緑内障の方のほとんどは正常眼圧緑内障といえます。

続発緑内障

「続発緑内障」は“目以外の部分に緑内障となる原因がある”緑内障です。 つまり、何か体に調子が悪いことがあって、それが原因で目が緑内障になる場合です。 ここでは詳しくは説明致しませんが、原因としてはステロイド点眼剤などの薬剤、 糖尿病、ぶどう膜炎、角膜炎、白内障の手術などがあります。

先天緑内障

「先天緑内障」は先天的に房水が排出される部分の発育が悪いため、房水が排出されず、 結果眼圧が高くなるものです。生まれつきのものです。
では、次からはここで挙げられた中の特に知っておきたい緑内障について見ていきましょう。

閉塞隅角緑内障

まずは閉塞隅角緑内障(へいそくぐうかくりょくないしょう)です。
右の拡大図をご覧ください。
「房水と眼圧」の部分で説明したことを覚えておられるでしょうか?
毛様体で作られた房水は最終的にシュレム管より排出されるのが正常な房水の流れでした。
閉塞隅角緑内障は虹彩が房水の出口であるシュレム管をふさいでしまうために、房水が排出されず、房水の量が眼球内で増加し眼圧が上がることで引き起こされます。

原因

水晶体の厚みが原因です。
実は、水晶体は年をとると徐々に厚くなります。
そして厚くなった水晶体が虹彩を前へ押すことで隅角が狭くなり、房水の出口をふさいでしまいます。
ですから、閉塞隅角緑内障は若い方ではなく、ご高齢の方に多くなります。

症状

この緑内障は眼圧が急激に上がるのが特徴です。
前日まではなんともないのに、次の日は目がぱんぱんに腫れます。
そして嘔吐や吐き気、頭痛の症状があります。
急激におこるので脳に原因があるのかと思い病院に行ったら、実は緑内障だったということもあります。
この場合はすぐに手術が必要となります。
急激な眼圧の上昇は視神経に大きなダメージを与え、視神経が時間の経過とともに死んでしまうからです。
視神経は回復しないので、手術後の目の状態は手術を行うまでの時間、視神経がどれだけダメージを受けたかに関係します。

開放隅角緑内障

次は開放隅角緑内障(かいほうぐうかくりょくないしょう)です。
上記の閉塞隅角緑内障とは違い、開放隅角緑内障はその字の通り、隅角が何かにふさがれているわけではありません。ですが緑内障となります。
この開放隅角緑内障はちょっとだけ複雑です。
それはこの緑内障には眼圧が上がる「高眼圧緑内障」と 眼圧が正常な「正常眼圧緑内障」の2種類の緑内障があるためです。
「ん? 緑内障って眼圧が上がって目に影響が出ることなのに、眼圧が上がらないのに緑内障??」と 思われるかもしれません。
では、その違いについて見ていきましょう。

高眼圧緑内障

右の図をご覧ください。
閉塞隅角緑内障とは違い、隅角はふさがれておりません。なので房水の流れは正常のように思えますが、よくご覧ください。 線維柱帯という部分に何か詰まっていますね。線維柱帯ってなんだっけ?と思われた方は 「目の構造」の項目の「線維柱帯」の部分をもう一度ご確認ください。
房水は線維柱帯を流れるときにろ過されますが、この線維柱帯にいろいろなものが詰まって、房水の流れがスムーズにいかなくなる事があるんです。 そのために房水の量が眼球内で徐々に増え、眼圧が上がります。 そして眼圧が上がると視神経乳頭に影響が出る…という仕組みです。
これが高眼圧緑内障です。
閉塞隅角緑内障と同じように房水の流れが悪くなりますが、高眼圧緑内障は流れにくいだけですので急激に眼圧が上がることはありません。 ですが放置したままですと、徐々に視神経に圧力がかかりますので、早めの検査・治療が必要となります。

正常眼圧緑内障

右の図をご覧ください。
房水の流れは正常、線維柱帯も詰まっておらず、特になにも問題もなく眼圧も正常範囲です。 ですが、緑内障となる場合があるんです。 しかも緑内障の方全体の70%を占めるのがこの正常眼圧緑内障なのです。
そもそも緑内障とは、
1.眼圧が上がる。
2.視神経乳頭に正常でない圧力がかかる。
3.視神経がダメージを受けて、視野がかける。
この順番でおこると考えられていましたが、この緑内障では違います。 正常眼圧の範囲内(10~21mmHg)にもかかわらず、視神経がダメージを受けます。

正常眼圧緑内障の原因は?

視神経が弱いために正常な眼圧でもダメージがあるのではないかと考えられています。 血行が悪く視神経が弱くなったり、加齢により視神経の細胞組織が弱くなるのが原因だと考えられています。
ですが、特に気にすることはありません。閉塞隅角緑内障とは違い、急激な眼圧の上昇はありませんので、 しっかりと定期検査を受ることで 早期発見し治療することができます。

緑内障にはどんな症状があるの?

一般に緑内障では、自覚症状はほとんどなく、知らないうちに病気が進行していることが多くあります。
視神経の障害はゆっくりとおこり、視野(見える範囲)も少しずつ狭くなっていくため、目に異常を感じることはありません。
急性の緑内障(閉塞隅角緑内障)では急激に眼圧が上昇し、目の痛みや頭痛、吐き気など激しい症状をおこします。

時間が経過するほどに治りにくくなるので、閉塞隅角緑内障の発作がおきた場合はすぐに治療を行い、眼圧を下げる必要があります。
多くの場合、自覚症状がない緑内障に対して最も重要なことは早期発見・早期治療です。
一度失われた視神経を元どおりにする方法は現在のところありません。
病気の進行を止めることが治療の目標となります。
ですから、出来るだけ早期に緑内障を発見し、緑内障と診断されたらすぐに治療をすることが大切です。

緑内障はどんな検査をするの?

眼圧検査 オートレフケラトノメーター
直接、目の表面に測定器具をあてて測定する方法と目の表面に空気をあてて測定する方法があります。
緑内障発見ための重要な検査です。

眼底検査 OCT:光干渉断層計
視神経の状態を見るために視神経乳頭を観察します。
視神経がダメージを受けている場合、へこみの形が正常に比べて変形し大きくなります。
緑内障発見のための必須の検査です。

視野検査 HFAⅡ:ハンフリーフィールドアナライザー

視野の欠損(みえない範囲)の存在の有無や大きさから緑内障の進行の具合を判定します。

緑内障はどんな治療をするの?

緑内障の治療は病気の進行をくい止めるため、眼圧を低くコントロールすることが最も有効とされています。
治療法としては薬物療法、レーザー治療や手術が一般的です。
レーザー治療や手術を受け眼圧が低くなっても、その効果が維持されるとは限らず、再度手術を行う場合もあります。

薬物治療

眼圧を下げるために使われる薬は、主に房水の産生量を減らしたり、房水の流れを良くする薬です。
まず点眼薬からはじめ、最初は1種類の薬で様子を見ながら、途中で変更したり、また2~3種類を併用することもあります。
点眼薬だけでは不十分な場合、内服薬を併用することもあります。
急激に眼圧の上がる閉塞隅角緑内障などの急性緑内障の場合や、または薬物療法で眼圧コントロールが不十分な場合はレーザー治療や手術を行います。

レーザー治療

レーザーを虹彩にあてて穴を開けたり、線維柱帯位あてて房水の流出を促進します。
比較的安全で痛みもなく、入院の必要もありません。

手術

房水の流れをさまたげている部分を切開し流路を作って房水を流れやすくする方法や、毛様体での房水の産生を抑える方法などがあります。

日常生活で気をつけること

日常生活で特に気をつけることはありません。
医師の指示を守り、健康的で無理の無い規則正しい生活をこころがけましょう。
ほとんどの緑内障は自覚症状がなく、 病気の進行に気づかないことが多いので、 定期的に眼科を受診しましょう。
治療のための薬は回数・量を守って使用しましょう。

緑内障についてよく寄せられる質問

緑内障患者は予想以上に多く、40歳以上の日本人の3.5%、すなわち30人に1人はいるといわれています。
しかも、その中の80%程度は自分では気づいていない潜在患者であるともいわれています。
緑内障は成人の失明の一大原因となっていますが、正しく理解している人はきわめて少ないのが現状です。
「目の成人病」の一つともいわれ、高齢化社会の進行とともに、緑内障の患者数もますます増えていくと考えられます。

眼圧が正常範囲の緑内障があります。
正常眼圧緑内障とは、隅角は正常で、眼圧も正常範囲にあるにもかかわらず、視神経に障害をきたす緑内障で緑内障です。
開放隅角緑内障に分類されます。
緑内障の中では、最も多いタイプです。
欧米にくらべて日本人に多く、40歳以上の日本人成人の2%程度がこの病気であるともいわれています。
「正常眼圧緑内障」の症状
まれに頭が重い、肩が凝るといったような症状があることもありますが、進行するまではほとんど症状がありません。
そのため多くの場合気付かずに放置されていることが多いようです。
眼科での視野検査がもっとも確実なチェック方法です。
日常の生活の中では、視野が欠けていても両眼で補い合うので、かなり進行してしまうまで気づきにくいのです。
早期診断、早期治療が重要なので、眼科での検診をおすすめします。

緑内障は、その原因によって、「原発緑内障」・「続発緑内障」・「先天緑内障」に分類されています。
「原発緑内障」とは、明確な原因を特定できないもので、さらに「原発開放隅角緑内障」と「原発閉塞隅角緑内障」、「正常眼圧緑内障」に分類されます。
「原発開放隅角緑内障」と「原発閉塞隅角緑内障」とでは、眼圧が上昇する機序が全く異なるために、緑内障という同一の病気とは思えないほど、症状・治療法も異なっています。
「続発緑内障」とは、他の眼疾患や全身疾患、薬剤の使用に原因を特定できるものです。
「先天緑内障」とは、胎生期における隅角の形成異常によるものです。

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